アジャイル開発を導⼊したことで部分の完成に注⼒してしまい最終的に⼀貫性が無いシステムになってしまうかもしれません。
体験設計のプロトタイピングでは⼈・モノ・環境といった要素の関係性や役割に着⽬するため、ラフな関係図から徐々にディテールの相互接続や時間軸に沿った変化を構築し全体を徐々に精緻化していきます。
部分を作り込むときでも全体との関係性を意識しながら進め、部分の集合が全体になるのではなく全体を分解したものが部分になるようにプロトタイピングをおこないます。

システムデザインは全体から考える

主要な機能部分が完成しても周辺システムがなければ体験システムとして使えません。開発リソースが限られる中で⼀部だけに注力してしまうとシステム全体がちぐはぐなものになってしまう危険性があります。

これは体験設計と製品設計を同時におこなうことで起きる問題でもあります。製品設計の前にしっかりと体験設計を進めて各機能の役割を明確にすることで防ぐことができます。体験設計を実現するためのシステムとして全体を考え個々の機能や部分へと分解して考えることが重要です。

同じリソースを使う場合でも、部分から⼊るのではなく全体を薄く広く考えていくことがシステムデザインのプロトタイピングになります。⼿法はいくつかありますが、登場⼈物、登場デバイス、利⽤環境などのシステム要素(オブジェクト)の関係性や役割を明⽰していく作業になります。

システムモデリング、アクティングアウト、ジャーニーマップなど部分に偏らない表現⼿法を選ぶことで良いスタートを切ることができます。 

ハードとソフト、製品とサービスを⼀緒に考える

会社の組織の都合によってプロダクトデザインとGUIデザインがバラバラにおこなわれたり、主製品と周辺製品で開発のタイミングが違っていたりすることは良くあります。変化が少なく個別性能をアップデートしていけば良い時代では問題になりませんでしたが、より密接な連携が必要で総合体験価値が重要になっている現在では多くの問題を引き起こしています。

最初の段階で複数のチームが⼀緒に体験設計をおこなうことでその後の個別製品開発がスムーズになります。ハードとソフトまたIoTデバイスとアプリの連携を想定したプロトタイピングではHOTMOCKやAdobeXD、RaspberryPiなどの簡単なツールを組み合わせることで連携を確認することができます。

早い段階でハードとソフトのような関係を一緒に作り全体の目的やそれぞれの役割を明確にした後で、個別開発に入っていくことが体験設計のプロトタイピングの重要なステップになります。 

アジャイル開発とシステムデザイン

モジュールごとに仕上げていくアジャイル開発では、システムのゴールとなる体験設計を事前におこなっておくことで、各要素への要求や関係性が明確になり進めやすくなります。

システムデザインをモデルベース開発でおこなうということも同じ意味になります。上位要求(=体験設計)が構造的に分解されて下位要求や仕様におとしこまれている状態を管理することでアジャイル開発がスムーズにおこなえます。

体験システムに対するユーザー要求、製品要求、製品仕様を常に参照し確認できるようにしておくこともプロトタイピングの重要な役割です。 

上流で体験設計をプロトタイピングできるチームを作る

もちろん最終的にはきちんと作られた機器や利⽤環境、実際のユーザーによって体験設計の評価をおこないブラッシュアップすることになりますが、多くの場合そのブラッシュアップは体験設計そのものの⾒直しではなく、予定している体験ができるようにするための製品設計の調整になってしまい、開発後半での体験評価は体験設計の根本的な⾒直しには繋がりにくいという問題があります。

お⾦や時間が潤沢にあれば、何度も最初に戻って体験設計からやり直せたり、市場に製品を出した後でビジネスを継続しながら⻑期的な活動の中で体験設計を磨いていけますが、通常の開発では体験設計のプロトタイピングは体験設計が修正できる上流段階でおこなう⽅が良いのです。

まだ何も出来ていない段階でのプロトタイピングでは仮想技術や想像⼒を使った「⾒⽴て」によって⾏わなければならず、開発チームのマインドセットが揃っていなければシラケタ雰囲気のプロトタイピングになってしまいます。 開発後半で試作機ができてくるとみんなが集まり色々な意見が出てくるというのを聞いたことがありますが、何も無い段階で盛り上がれるチームを作ることができればもっとも効率的な体験設計のプロトタイピングがおこなえます。